JackMasaki’s blog

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銀座VR3で展示した"REFLECT-ON"の開発フローとか

こんにちは。

この記事は技術的な内容はあまりなく、展示した作品の話とその開発フローを振り返るポエムな記事になります。

今回、銀座VR3というイベントに出展をさせていただいたREFLECT-ONというコンテンツはこんな感じのものです↓

REFLECT-ONはおよそ1ヵ月で開発し、展示したコンテンツです。

この作品がどうやってできたか。を振り返りながら書いていこうという奴です。


これはこの作品に限った話ではないのですが、私の所属しているMark-onでは概ね次のようなフローで展示しているVRゲームの開発をしています。

  1. 開発する"遊び"の選定
  2. 類似する作品の研究
  3. " 遊び"への要素の追加
  4. ” 遊び”のルールの作成
  5. 要素のバランス調整
  6. 最低限のゲーム内容で"遊び"を確認
  7. 見た目、聞こえ方の調整
  8. 初見プレイの感想からのフィードバック

ざっくりですが、順に解説します。

1. 開発する"遊び"の選定

ゲームを開発するにあたって、私がもっとも重要だと考えているのは、「そのゲームは何を"遊び"の軸に据えているのか」です。

これは今回の作品でいうと「球を跳ね返す」ということになります。"遊び"の軸はシンプルなほど太く、複雑なほど細くなります。

VR技術を使用したコンテンツは、ただでさえ味付けが濃くなりがちです。であればVR技術という濃い味付けに負けない太く強い軸である必要があると考えています。

また、軸自体が面白くないパターンを除き、要素を追加して複雑化したコンテンツであってもぶれにくく、開発中に迷った時の立ち戻れる指標になります。

2. 類似する作品の研究

"遊び"の本質が似ている作品はとことん調査します。そして、なぜこの"遊び"は面白いのか。を研究します。

VR技術を使用したコンテンツであっても、類似する”遊び”を持つ作品が必ずしもVR技術を使用しているとは限りません。

今回の"REFLECT-ON"で"遊び"が近かったものはまずエアホッケー、PONGなどです。元々"遊び"がシンプルなこともあり、また長く愛されている作品も出ていることから今回はやりやすい例だったと思います。

3." 遊び"への要素の追加

”遊び”の本質だけでは見たことがある、やったことがある作品になってしまい、興味を持つ人、手に取る人は限りなく少なくなってしまいます。

ここではアイディアを盛り過ぎても構いませんので、雑談をしながらこんなのどうよ。あんなのあったら素敵とアイディアを出します。お酒を飲みながら、食事をしながら、なんてのもいいかもしれません。

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今回は"ゲームをシンプルにしてエフェクトなどに力をいれる"というテーマもあり、アイディアとしてはエフェクトの見せ方などの話が多かった記憶があります。

ゲームに介入した追加要素は”球道予測線”システムという球から予測線が出て、そこさえ守っていれば確実に球を跳ね返せる仕組みでした。

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4.” 遊び”のルールの作成

ゲームはルールを制定し、限られたルールの中で競いあうものです。スポーツをイメージすると分かりやすいと思います。

なので"遊び"を"遊び"たらしめるルールを作っていきます。

今回の作品では「球を跳ね返す」、では跳ね返せなかったら?→点を取られる→ミスが少なく点を多く持っていた方が勝ち。というルールです。

5. 要素のバランス調整

ルールができると、上手くいった。失敗した。という行動が生まれます。

これをリスクとリターン(ストレスとリワード)として各要素を分解して分けていきます。不必要になった要素はこの段階で削除していきます。

例えば今回でいうと球がゴール(自分)に迫ってくるのは点を失うリスクになります。しかし、上手く打ち返せると爽快感とともに自分から球が遠ざかっていくというリターンが与えられます。

ここで重要なのはリスクとリターンのバランスです。リスクが大きくリターンが少ないものは選択肢として外れ、リスクが少なくリターンが大きいものはマンネリ化しがちです。

6. 最低限のゲーム内容で"遊び"を確認

そもそも面白いのか、要素はどうなのかを確認するために、いままでの内容を踏まえて、見た目や聞こえ方を全く考慮しないゲームを作ります。

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ここでのプレイは開発者同士でプレイします。ルールの調整や、要素が足りない、不必要な要素があるなどのゲーム性に関する調整はここでします。

ちなみに、この辺りで内製デバッグ用ツールを作っておくとあとがかなり楽になります。

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ゲーム性に関する調整が終わったら一度、音楽や見た目を担当する人にプレイしてもらうと次の世界観作りが伝わりやすいかと思います。

7. 見た目、聞こえ方の調整

ゲームの”遊び”ができたらその”遊び”に合った世界観を作っていきます。

主に画像や音声といったアセットを追加していくフェーズです。

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3." 遊び"への要素の追加で出た見た目に関する要素はここでもう一度入れたほうがいいのかを議論しつつ追加していきます。

個人的には、コンテンツに音声を付けるのは最後にした方がいいと思っています。これは音声をつけると途端にコンテンツが完成した気持ちになってしまうためです。「思ったよりできてるじゃん」→「進捗まだまだだった…」を防ぎます。

余談ですが、Mark-onで開発してるゲームのアセット類はイラスト、モデル、音声などもすべて内製です。

どうしても世界観を統一したいとなった時に配布されているアセットだと、世界観がバラバラになるか、ほかの作品とほぼ同じ世界観になってしまうためです。

8. 初見プレイの感想からのフィードバック

見た目、聞こえ方の調整ができたら初見の人にプレイしてもらいます。

この時できればリモートではなく、同じ場所でプレイしてもらうのがベストです。特にVRコンテンツではフィードバックにプレイヤーの動きも含まれるためです。

初見の方にはルールも教えないでプレイしてもらう事が多いです。というのも、このフェーズまでくると開発者はどうしてもゲームに慣れてきて熟達化してしまいます。それが、初見さんのプレイではそんな操作しないだろう、そんな状況は発生しないだろうということが簡単に発生します。

ここでフィードバックをまとめてバランス調整をしていき、展示に向けて準備していきます。


個人勢が趣味でVR技術を使用したゲームの開発、展示などをする際の一助になれば幸いです。

docs.google.com

こちらにチームメンバーが書いてくれた展示するときの工夫に関するスライドもあるので合わせてご覧ください。

続けて展示するような作品であれば、展示した際の感想や質問、アテンド側の気づきなどをまとめて共有しておくと次の展示で活かせたり、ゲームの調整ができたりします。

REFLECT-ONについて

REFLECT-ONですが、当初は銀座VR3でのみ展示の1回きりのコンテンツの予定でしたが、上海で行われたMaker Carnivalで展示させて頂いたり、大変ありがたいことに「もう展示しないんですか?」「ストアには出さないんですか?」と言った声を多くいただいております。

現時点でお答えすることはできませんが、今後も気長に見守ってもらえれば幸いです。